@misc{oai:jrckicn.repo.nii.ac.jp:00000697, author = {MORIYAMA, Masaki and 守山, 正樹}, month = {Apr}, note = {video/mp4, application/pdf, 皆さんこんにちは。今回は地域診断の2回目です。前回は量的データと質的データについてお話し、都市のイメージという考え方を紹介しました。  今回は、皆さんが実際に地域診断に取り組むことを前提として、データや情報を集める際の視点や問題意識を中心にお話しします。 1 地域全体はどうなっているの?(俯瞰的・数量的な地域把握) 1)地域全体の動きは? その地域は元気があるの?  目前の1人の患者さんの場合は、その人の顔色や歩き方、体の動かし方などを見るだけでも、ある程度はその人の状況を把握することができます。では地域の場合はその全体像をどうやって把握したらいいでしょうか。  地域全体の動きを考えたとき、この70年間における日本全体の大きな変化を無視するわけにはいきません。産業構造が変わり、人々の労働の仕方が変わり、農村にいた人々が、都市に向かうようになりました。大都市は過密化する一方で、地方では過疎化が進んでいます。家族構成も変化し、出生率が減少し、寿命が延長し、高齢化が進んでいます。皆さんが地域診断をしようとする地域では、どのような動きがあるでしょうか。 2)人口の様子は?  地域の性格: 農業や漁業などの第一次産業が盛んだった時代に比べ、現在の日本では大多数の人々が都市に住んでいます。しかしどの都市でも一律に人口が増えたわけではありません。多くの村や町が新たに市制に移行したり、町村合併が進むにつれて、行政的には都市部の地域内に、農漁村的性格の強い地域が含まれるに至り、人口密度が低下する場合もあります。皆さんが地域診断をしようとする地域の性格はどうでしょうか。  人口集中地区: 現実的に人口が集まっている地域を把握するために、人口集中地区が設定されています。市町村の区域内で「人口密度が高い(4千人/平方キロメートル以上)の基本単位区が互いに隣接して人口が5千人以上となる地区」に設定されています。(ただし人口密度が低くても都市的傾向の強い空港・港湾・工業地帯・公園)は人口集中地区に含まれます。) 3)人々はどこで、どう生活しているの?(生活圏) 3-1)ハビタット、生活圏  生物が主に生息する区域を指す言葉として「Habitat 生息地」があります。また人が社会的存在として行動する範囲・地域、日常生活とその延長を営む空間を指す言葉としては「生活圏」があります。  3-2)日常生活圏域  地域診断で取り組むのは人のハビタット、生活圏です。しかし私たちはまったく自由に地域を考え、好きな場所で生息し生活しているわけではありません。人はいずれかの行政区域に所属し、そこで行政的なサービスを受け、また税金を払っています。このような行政区域割りは歴史をたどると、古くは7世紀に進められた班田収授法に行き着くとされます。  保健師は行政的な立場で地域診断をする場合が多いため、生活圏についての行政的な捉え方「日常生活圏域」、さらにその具体として、中学校や公民館などの公共施設を中心とした地域の捉え方「中学校区」「地区公民館区域」などに親しんでおく必要があります。地方では過疎化・高齢化の進行にともなって中学校区の統廃合が行われた結果、新中学校区が日常生活圏域の基本単位として相応しくなくなり、「地区公民館区域」が新たな基本単位となった場合もあります。  3-3)様々な生活の場・圏  人の生活のための行動に注目すると、それらの行動が行われる範囲(地域)として、様々な圏を設定できます。買い物圏、子育て圏、通園圏、通学圏、通勤圏、受療圏・・・・・。皆さんが地域診断を考えている地域では、どのような圏の存在が大切でしょうか。それらの行動を果たすための機能が存在する場・施設はどのように位置しているでしょうか。 2 人々は何を感じ考えているの? (質的・人間的な地域把握) 1)感覚的•暗黙的理解  俯瞰的・数量的に地域を把握できたら、次はそこに住む様々な人の立場に立った質的・人間的な把握を試みます。まずは保健師自身がその地域に入り、観察し、五感を働かせて感じることが必要です。「言語の背後にあって言語化されない知」を哲学者マイケル・ポランニーは知(knowledge)の「the tacit dimension(暗黙の次元)」と呼びました。この考え方を援用した日本語表現として「暗黙知」があります。 2)言語的・対話的・参加的理解  保健師の場合、経験や直感に基づいた非言語的な理解は大切ですが、それと同じかそれ以上に大切なのは、地域に存在する多様な場に参加し、そこで暮らすいろいろな立場の人と対話し、対話の中から地域の課題を言語化して理解していくことも大切です。   2-1)妊婦の立場   あなたがその地域に住んでいて妊娠したとします。その地域で妊婦として暮らそうと思った時、何を感じるでしょうか。 2-2)こどもの立場 その地域で暮らしている子供たちは何を考え何を感じているでしょうか。まず皆さん自身の視線の位置をずっと下げていき周囲のものを見上げるような視線をとってみるだけでも多少は子供の立場に近づくことができます。 2-3)思春期、青年期の立場 その地域で暮らす思春期の若者の立場に立ったら、地域はどのように感じられるでしょうか。あなたが若者だったらもっと刺激のある都会に行きたいと思うでしょうか。 2-4)勤労者・職業人の立場 その地域で就職したいと思う勤労者としてのあなたを捉えてください。その地域にはあなたがしたいと思う仕事はどのくらいあるでしょうか。求人広告を見るならその地域にはどんな仕事があるでしょうか。 2-5)高齢者の立場 その地域で暮らす高齢者の立場に立って考えてみてください。その地域は高齢者にとって暮らしやすいでしょうか。 2-6)障がい者の立場  あなたが障碍と共に生きているとしたとき、その地域はあなたにとってどのように感じられるでしょうか。物理的なバリアーはどのくらいあるでしょうか。コミュニケーションや社会参加などを考えたとき、その地域の課題は何でしょうか?}, title = {地域診断に親しむ}, year = {2017}, yomi = {モリヤマ, マサキ} }