@misc{oai:jrckicn.repo.nii.ac.jp:00000696, author = {MORIYAMA, Masaki and 守山, 正樹}, month = {Apr}, note = {video/mp4, application/pdf, みなさん、こんにちは。今日からは、地域で公衆衛生活動に従事する看護職がどのように保健統計学を応用するかを学びます。その出発点が地域診断の考え方です。 1 地域診断とは何か? 看護師の場合は目前の患者さんについての診断がまずは大切です。  保健師の場合は一人ひとりの住民に加えて地域に向かい合います。地域にはいろいろな人が住んでいます。いろいろな社会組織があります。このように複雑な地域を診断するとはどういうことでしょうか。  定義: 地域診断 (community diagnosis) とは「公衆衛生を担う専門家が地区活動を通して地域課題を明らかにし、地区活動を通して個人のケアにとどまらず集団あるいは地域を対象にケアを行い、地域課題を軽減解消していく一連のプロセス」です。  地域診断は量的・質的データで地域を捉えることから始まります。  まず大切なのは保健師自身がその地域を「具体的に知りたい!」と思うことであり、さらにそれを行動に移し、その地域を動き回り、地域の現状や課題に触れ、人々の様子を肌で感じることです。 2 地域診断の過程 では次に地域診断の過程を段階別にみていきます。 1) 地域診断の企画  保健師が日常の活動の中で疑問に感じることを整理し、その疑問はどのようにしたら明らかにできるかを考え、具体的な手順を検討し始めます。 ・そこの住民になったつもりで考え始める。 2) 量的データの収集と分析 目前の1人の患者さんの場合であれば、まずは身長・体重・血圧・脈拍、様々な臨床検査値などが問題となるでしょう。  地域の場合は、保健統計や疫学で学んだ統計データが地域を知るために役立ちます。  基本である人口は国勢調査や住民基本台帳から把握できます。どの地域でも大切な出生・死亡・婚姻等は人口動態統計から得ます。  地域での疾病の発生状況・罹患は、がん登録や脳卒中情報システムなど地域疾患登録により、また有病は3年に1度行われる患者調査からの受療率などにより、都道府県単位で状況を把握できます。市町村レベルで有病について知りたい場合は、国保レセプト資料、健康診断資料等が活用できるでしょう。  統計データから、健康や疾病の状況を市町村など地域単位で把握しようとするとき、しばしば用いられる値として死亡率があります。各地域の死亡率を比較するに当たっては、若者が多い地域/高齢者が多い地域など、地域の年齢構成が異なるため、年齢構成の隔たりを補正・調整する必要があり、以下の値が用いられます。 ・年齢調整死亡率: もし人口構成が基準人口と同じだったら実現されたであろう死亡率のことです。たとえば、がんは高齢になるほど死亡率が高くなるため、高齢者が多い集団は高齢者が少ない集団よりがんの粗死亡率が高くなります。そのため仮に2つの集団の粗死亡率に差があっても、その差が真の死亡率の差なのか、単に年齢構成の違いによる差なのか区別できません。そこで、年齢構成が異なる集団の間で死亡率を比較する場合や、同じ集団で死亡率の年次推移を見る場合にこの年齢調整死亡率が用いられます。 ・年齢調整死亡率(直接法) =(Σ(観察集団の年齢階級別死亡率×基準集団の年齢階級別人口)/(基準集団の総人口) ×10万(または千) ・標準化死亡比(SMR, Standardized Mortality Ratio):  上記、直接法の計算では、観察集団の年齢階級別死亡率が必要ですが、集団の規模が小さいと偶然変動が大きくなります。このような場合は観察集団の年齢階級別人口と死亡数があれば計算できる標準化死亡比(SMR)が用いられます。この計算を間接法といいます。 ・標準化死亡比(SMR) =(観察集団の死亡数)/Σ(基準集団の年齢階級別死亡率×観察集団の年齢階級別人口)×100 =観察集団の死亡数/期待死亡数 × 100 3) 質的データの収集と分析 量的なデータは様々な統計から得られ、保健統計の知識を使ったデータ分析から地域の状況が見えてきます。  一方、質的な情報は「保健師自身の観察、気づき、五感を働かせて感じ考えたたこと、住民の声」など、数値化は簡単ではありません。しかし数値化が難しくても、語り・ナラティブとして文章化は可能です。質的なナラティブな情報から大切なことを導き出すためには、コンピューターによる統計的な情報処理よりも、メモを取り・カード化し・KJ法で視覚化するなど、参加的な手作業によるデータ処理が有効です。 3 第一歩としての地域のイメージ化 以上で、地域診断の概要についてお話ししました。  さて皆さんは地域について、どのようなイメージを持っているでしょうか。  地域診断を具体化する第一歩は、皆さんが現在住んでいる街や都市、あるいはこれまでに住んだことがある町や都市についてのイメージを描いてみることです。参考書として ケヴィン・リンチの「都市のイメージ」を紹介します。  ケヴィン・リンチ(Kevin Lynch, 1918-1984)はアメリカ合衆国の建築家、都市研究者です。1960年に刊行した『都市のイメージThe Image of the City』では、ボストン、ロサンゼルスなどで、街を歩く人々を対象に都市のイメージについてのアンケート調査を行い、人が持つ都市のイメージを構成要素としてパス(Paths 道筋)、エッジ(Edges 縁, 境界)、ディストリクト(Districts 地区, 都市の部分)、ノード(Nodes 結節点)、ランドマーク(Landmarks 目印)の5項目を挙げました。  では皆さんがイメージしやすい地域(都市)について、そのイメージを描いてみてください。  ・自分がイメージを語ることができる都市、語りたい都市  ・これから知りたい都市  皆さんがこれから保健師になろうとするのであれば、まず自分自身の頭や心の中にどのような地域のイメージが原体験として存在するかを理解する必要があります。  将来、全く新しい都市で保健師として仕事をするにしても、皆さんが既に経験している地域のイメージは、皆さんがこれから地域について考えていく時に、きっと役立ちます。}, title = {地域診断と保健統計}, year = {2017}, yomi = {モリヤマ, マサキ} }