@misc{oai:jrckicn.repo.nii.ac.jp:00000694, author = {MORIYAMA, Masaki and 守山, 正樹}, month = {May}, note = {video/mp4, application/pdf, 皆さんこんにちは。これから3回の授業ではEvidence-based nursing「科学的根拠に基づいた看護」に向けた考え方をお話しします。なぜかといえば、保健統計や疫学の基礎編で皆さんが学んだ考え方が、最も直接的に応用されるのがこの分野だからです。  今回は出発点としてEBM、Evidence-based medicine、「根拠に基づく医療」についてお話します。 1 エビデンス(Evidence,根拠) 1) 根拠に基づく医療とは 「根拠に基づく医療」 Evidence-based medicine (EBM)とは、医療者の経験や主観だけではなく、根拠のあるデータに基づいて医療を行おう、という取り組みです。  Evidence-basedという言葉は、1980年代から米国で使われ始め、現代の医療の在り方の中心になっている考え方です。根拠のあるデータは、皆さんが既に学んだ保健統計や疫学の考え方に基づいて作られます。疫学研究の考え方を臨床の医療に適応する方向が「臨床疫学」でEBMの重要な部分です。 2) エビデンス(根拠)とは何か? ここでいうエビデンス(根拠)とは「正しいと信じられる事実の集合」です。外的なエビデンスは疫学等の研究によって得られ、論文として発表され、公表されたものです。  ・では看護師の経験は?; エビデンスというと外的エビデンス、文献的なエビデンスを指す場合が一般的です。しかしたとえば看護師が、勤務先の医療機関で医療の質を上げることを意識した勤務や研究的活動を行い、その結果分かったこと、そこから得られる事実を集積するような内的エビデンスも大切です。 3)エビデンスを求める動き エビデンスに基づく実践の動きを作ったのはイギリスの疫学者Dr.コクラン (Archie Cochrane, 1909-1988)です。コクランは医療の有効性を追求し、一般の人々は効果がある有効なケアだけに支出すべきだという考えを持っていました。コクランは「医療に関する政策立案者や組織が最良の決定を行えるようなエビデンスを、医療の専門家は提供していない」と批判した画期的な本(Effectiveness and Efficiency: Random Reflections on Health Services)を1972年に出しました。  エビデンスとしてコクランが特に支持したのはRCT(randomized controlled trial) を取り入れたシステマティックレビューの試みです。コクランは1988年に亡くなりましたが、RCTのシステマティックレビューの情報を集積し体系的な更新を行うコクランセンターが1992年に英国で設立されました。この考え方、コクラン共同計画はその後全世界に広まっています。 4) エビデンスの分類 各文献のエビデンスレベルは、治療と予防、予後、診断などの医療場面を考慮して、複数の分類が提案されていますが、共通する考え方としては、三角形の頂点に来るエビデンスレベルの最も高い(レベル1)はRCTである一方、症例報告や専門家の意見は低いエビデンスレベル(レベル5)が割り振られています。 2 レビュー 1)レビューとは何か ・文献レビュー: ここでいうレビューとは文献レビューのことです。文献レビューとは、あるテーマに関するあらゆる著作物を対象として、特に重要な著作物を探し出し、主な著作物を収集し、それに目を遠し、評価し、まとめることです。  ・文献クリティーク: 関連する考え方として文献クリティークがあります。文献クリティークとは、文献を読み、その「良いところ、悪いところ」を指摘し、評価・検討・判断を行うことです。科学的論理に沿って分析されているかどうか、結果・考察が導き出されているかどうか、主観的意見で終わっていないかどうか、単なる症例発表ではないか…等、検討すべき内容がいくつかあります。文献クリティークは文献レビューの重要な部分でもあります。 2)レビューはいつ行うか 研究を進める際は、常に文献レビューが必要です。学生の皆さんにとっては、期末レポートや卒論を書くときに経験することが多いでしょう。 3)レビューはどう行うか 文献レビューの方法について学生のみなさんは、研究方法の授業で詳しく学びます。以下項目だけ示します。 -1 研究の主題を選びリサーチ・クエスチョンを決める。 -2 文献レビューの範囲を決める。いくつ位の文献を読もうとしているか、どのくらいの年数をカバーするか。 -3 文献検索を行うデーターベースを選ぶ。よく使われるものとしては英文の文献を探すならPubMed、CINAHLなど。和文の文献を探すならJ-STAGE, CiNii, など。気軽に探すならGoogle Scholarなどがあります。 -4 データベースで文献を探し当てる。 -5 探し当てた文献を批判的に読む(文献クリティーク) -6 文献を読んで分かった内容を文献レビューとして書き出し、自分のリサーチクエスチョンに結びつける。 4)レビューの書き方 文献レビューはそれ自体が一種の小論文です。以下の順番で書いていきます。 ・序論: 選んだ研究テーマは何か、リサーチ・クエスチョンは何か。 ・方法: どんなデーターベースを用いたか、どのようなキーワードを用いて文献を探したか、最終的に読む文献をどのようにして選んだのか、などを書きます。 ・本論: 選んだ文献を読んで分かったことを書きます。文献を出版年で並べ、時系列にそって書いたり、文献をテーマ別に整理し、テーマごとに書く、などの書き方があります。 ・結論と考察: 自分のリサーチ・クエスチョンに関連して、これまで行われた重要な研究からどのようなことが言えるのかをまとめます。 ・文献リスト: レビューに用いた文献をリストとして示します。 3 システマティック・レビューとメタアナリシス 1)システマティック・レビューとは 上記でお話した文献レビューは学生のみなさんが期末レポートや卒論を書くときにも行うものです。この文献レビューをより系統的・組織的(システマティック)に、厳密に行うのがシステマティック・レビュー (systematic review) です。システマティック・レビューで目指すのは、あるリサーチ・クエスチョンに関連して、現行の文献を完璧に収集・評価し、信頼性の高い複数の結果を総合し、統一見解的なまとめを作ることです。  システマティック・レビューの出発点としては信頼性が高い研究結果のみを集めることであり、この際「信頼性の高い研究だ!」として位置づけられているのが、RCTを用いた研究です。  システマティック・レビューの考え方の中心はresearch synthesis、 すなわち質の高い研究(research)の結果をいくつも統合・合成し(synthesis)、そこからリサーチ・クエスチョンに関連して総合的な結論を導き出すことです。  この総合的な結論を出す過程に、保健統計学の数量的・解析的な方法を適用することを「メタアナリシス (メタ分析)meta-analysis」といいます。 2)メタアナリシスの過程 -1 リサーチ・クエスチョンを決める。 -2 リサーチ・クエスチョンに関連した信頼できる文献を集め、選ぶ。 -3 選んだ文献から主要データを抜き出す: その研究はどのように行われたか、介入はどのように行われたか、どのような人々が何人被験者になっているか、介入の費用はどのように支払われているか、介入の結果はどうなったか、など。 -4 抜き出したデータの質、信頼性を検討する。 -5 信頼できると判断された複数のデータを結合し、メタアナリシスを行う。この過程でよく使われるデータ可視化の方法がforest plot(blobbogramともいう)です。 -6 結果を解釈して文章化する。}, title = {根拠に基づく医療と文献レビュー}, year = {2017}, yomi = {モリヤマ, マサキ} }