@misc{oai:jrckicn.repo.nii.ac.jp:00000678, author = {MORIYAMA, Masaki and 守山, 正樹}, month = {Aug}, note = {video/mp4, application/pdf, 1990年代は少なかった質的研究が日本でも増えてきました。質的研究では日本語を分析する方法が重要です。日本語の形態素解析の方法としては、奈良の先端科学技術大学で開発された茶筌ChaSenが有名です。最近では初期の茶筌は用いられませんが、使いやすさは抜群でした。 言語の意味構造にまで踏み込む場合は、文脈を考慮した分析が必要です。この領域は20世紀後半、欧米で急速に発展しました。例えば教育研究で、アメリカで最大の学会AERA(American Educational Research Association)に私は1990年代以後、数回出席しましたが、回を重ねるごとに、学会場の出版コーナーでは「QDA(qualitative data analysis)ソフト:質的データ分析ソフト」の展示が増え、この領域の発展が印象的でした。このCDロムはそのときもらったものです。 質的研究の中でもテキストマイニングは、量的統計分析パッケージを開発していた欧米の会社も参入し、ビッグデータの活用とも相まって、大ビジネスになっていますが、相当な費用がかかります。日本で質的研究を発展させるためには、日本人が開発した、日本語に親和性の高い分析方法が必須です。代表はSCATとKH Coderでしょうか。名古屋大学の大谷先生が開発したのがSCAT、エクセルの表を用います。計算ではなく、テキストを表に書き込んで整理する原則的で分りやすい方法です。立命館大学の樋口先生が開発したのがKH Coder、こちらは本格的な計量テキスト分析のソフトです。 さ て「質的」といっても「生の言葉が渦巻く現実世界」から「インタビューの録音記録」さらに「整然と記されたテキスト型データの集積」まで様々な「質」があります。どの分析が適当でしょうか。私の場合は、現実世界では聞き書き、現場でのデータ整理ならもはや古典とも言えるKJ法、録音記録の分析ならSCAT、言葉のデータ処理ならKHCoderと考えますが、皆さんはいかがですか。 優れたソフトを使う質的データ処理の面白さに目覚めた方は、質的研究の本質である物の見方や哲学にも関心を持っていただきたく思います。これまで述べた質的データ処理方法の多くが依存するのがGrounded theoryです。これは、学会の定説やドグマに縛られることなく一調査者が「自ら新理論を産生できる」とする革新的な考え方で、多くの研究者に勇気を与え、質的研究やデータ処理の出発点になりました。しかしこの理論をドグマ化し「これが全て!」とすべきではないでしょう。実際、Grounded theoryの著者GlaserとStraussは本を書いた後、独自に発展し、互いにやや異なる見解に至っています。 さらにGrounded theoryは調査者がデータから理論を「発見discover」するとしますが、正しいでしょうか。実は発見ではなく「構成construct」するとの考えもあります。Grounded theoryで思考停止するのではなく、考え続けることが大切です。 混沌とした現実世界の解明を続けるためには、調査者がデータと対話してdiscoverするだけでなく、調査者が現実の混沌の中に踏み込み、現実と対話しconstructすることも必要でしょう。「構成主義Constructivism (philosophy of education)」の視点をどう活かすのかも課題です。 思い出せば、かって川喜田二郎先生はKJ法を「渾沌をして語らしめる方法」と位置付けておられました。Grounded theoryについては、どう思われていたのでしょうか。 Grounded theoryと質的データ処理は、質的研究を量的な科学に近づけ、結果として学位取得者も急増しました。私にとっては嬉しいことです。そして論文を書いたり、学位をとったりした後、さらに考えるべきこと、探求すべきことが多々あるように感じます。 注: 動画の中でSCAT を「エスキャット」と発音していますが、正しくは「スキャット」です。大谷尚先生からご指摘いただきました。ご訂正をお願いします。 (守山正樹)}, title = {質的研究とデータ処理}, year = {2016}, yomi = {モリヤマ, マサキ} }