@misc{oai:jrckicn.repo.nii.ac.jp:00000671, author = {MORIYAMA, Masaki and 守山, 正樹}, month = {Aug}, note = {video/mp4, application/pdf, 皆さんこんにちわ。今回はヘルスプロモーションとは何か、その意味を、マイクロレクチャー(オンライン講座)として、取り上げます。(オタワ憲章だけでなくアルマ・アタ宣言にもふれ、健康教育との違いにも言及します) ヘルスプロモーションとはWHO(世界保健機関)が1986年のオタワ憲章において提唱した新しい健康観に基づく21世紀の健康戦略で、「人々が自らの健康とその決定要因をコントロールし、改善することができるようにするプロセス」と定義されます。ヘルスプロモーションを理解したいなら、まずオタワ憲章を用意すること。できれば英語で。ネットから直ぐにダウンロードできます。WHOの世界戦略の中で、ヘルスプロモーションを読み解くのなら、ついでに、プライマリ・ヘルス・ケアに関するアルマ・アタ宣言1978年も用意します。 ヘルスプロモーション・オタワ憲章の8年前、1978年、プライマリ・ヘルス・ケアのアルマ・アタ宣言では何が主張されたのでしょうか。ポイントは第7章。2節にpromotive, preventive, ..との表現が出て来ます。予防だけでなく、8年後に登場するヘルスプロモーションを予見する言葉です。さらに次の3節。プライマリ・ヘルス・ケアに最低限含まれるものとして、健康教育、予防法、食の供給、適切な栄養、安全な水、基本的衛生、母子の養護、家族計画、感染症の予防接種、風土病予防、普通の病気の治療そして基本的医薬品。健康の維持に必要な物と技術が網羅されています。 次に1986年のオタワ憲章。最初の方に出てくる「健康のための前提条件」をみると「平和、住居、教育、食物、収入、生態系、資源、社会的公正/公平」と書かれています。「平和、公正」といった基本中の基本に加え、プライマリ・ヘルス・ケアでの「物・技術」がヘルスプロモーションの前提となっています。 では、いよいよオタワ憲章の中心部分。太字で書かれた三つの基本戦略が目にとまります。Advocate、Enable、Mediate。日本語訳はなかなか難しく、当初から議論がありました。「唱導、能力の付与、調停」などと訳されています。全て「人への働きかけ」を示す言葉です。物や技術ではありません。では、これらの「人への働きかけ」から発して「ヘルスプロモーション」はどのような活動を行うのでしょうか。示されているのは以下5活動領域です;1)健康的公共政策の確立、2)支援的環境の創造、3)コミュニティ活動の強化、4)個人スキルの開発、5)保健医療サービスの見直し。 さてこれで、「物や技術」ではなく「人への働きかけ」を重視する「オタワ憲章/ヘルスプロモーション」の基本が確認できました。では、この「人への働きかけ」は、日本ではどのように受容されたのでしょうか。出発点はこの図です。島内憲夫氏が、当時、WHOヨーロッパ地域事務局のIlona Kickbusch氏とヘルスプロモーションを語ったとき、メモに描かれた図が元になったと理解しています。 この解説図は、ヘルスプロモーションを日本に普及させる上で、大きな役割を果たしました。グーグルで検索語を「ヘルスプロモーション」としてネットの画像検索をかけると、今でもこの図のバリエーションが数多く表れます。しかし図の表面的な説明に留まる場合が多いようです。最初の図でヘルスプロモーションの受容が促進されたにも関わらず、その後、日本でヘルスプロモーションの理解がさらに深まったか、というと、必ずしもそうとは言えない、と感じられます。初期の優れた解説図に依存するだけでなく、私たち一人一人がヘルスプロモーションの意味を探求する必要があるのではないでしょうか。 さらに探求を進める上で、この図に加えて、興味深い手がかりになるのは、島内氏がオタワ憲章から読み取っておられる「地球サイズの愛」や「女性性」などのメッセージです。「女性性」は佐甲隆氏なども指摘しておられます。 では、ここから独自の探求です。Googleでhealth promotionと入力し、画像モードで検索すると、最も多く出て来るのがこのマーク。周囲に大きな円、中にも円がありAdvocate、Enable、Mediateと書かれています。中の円からは翼の形が三方向に拡がり、言葉が見えます。オタワ憲章のシンボルマークです。 これ以外に英語モードの画像検索で出てくる特徴的な図として目にとまるのが、手をつないだヒトが輪をつくるイメージ。「ヒトが球を押して坂を登る」という方向性を指向するイメージではなく、「ヒトが水平につながる全方位的イメージ」が読み取れます。 さらに「愛・女性性」といったメッセージの考察を進めるため、情報を探したところ、二冊の本に行きつきました。一冊目はTheodore H. MacDonald氏による「Rethinking Health Promotion: A Global Approach」です。本の冒頭13頁目に、オタワ憲章に含まれる三つの思想性として「Feminismフェミニズム」「Environmentalism環境保全主義」「Anti-authoritarianism反権威主義」が挙げられています。 まず「フェミニズム」はどこにあるのでしょうか。直ぐに気づくのはオタワ憲章の後半、「未来に向けた動き」の中にある「Health is created and lived by people within the settings of their everyday life; where they learn, work, play and love.」の部分。私が最も好きなオタワ憲章の箇所です。この「Love」の所は島内氏や佐甲氏も注目しておられます。この部分だけでなく、改めて最初から読んでみると、女性の優しさを感じられる箇所が幾つも認められます。 また「women and men should be equal partners」のように、男女の役割が書かれている部分は、常にwomenが先に来ています。 次に「環境保全主義」。「支援的環境を創造」の項を中心に明示されています。 では「反権威主義」はどうでしょうか。オタワ憲章での「ヒトへの働きかけ」が基本的に「上から下」ではなく「水平」を指向していることを考えると、「反権威主義」はオタワ憲章の本質だといえるでしょう。基本戦略3番目、Mediateの項で、政府やNGOが同列に捉えられているのも興味深いです。 さて、次の本、Robin Bunton氏らの編集による「The Sociology of Health Promotion」第7章でMichael P.Kelly氏とBruce Charlton氏は、旧来のモダニズムに基づく公衆衛生活動に対して、オタワ憲章はポストモダニズムの考えを具現化した、と書いています。 さて1986年生まれのヘルスプロモーションのオタワ憲章は、今年でもう28年目に入りました。「オタワ憲章はもう古い、次に何が来るのだろうか」という議論も時々聞かれます。しかし、私たちが、オタワ憲章の中に含まれている多様な、革新的なメッセージの全てを読み解いているわけではありません。 また神馬征峰氏もご指摘のように、ヘルスプロモーションの発展プロセスには、ヘルスプロモーションが系統的に拡がるツリー型だけでなく、タケノコがあちこちで芽を出すような、リゾーム型の発展があることが、知られ始めました。 Pascale氏らが指摘するPositive Devianceのようなイノベーションも興味深い動きです。 わが国において、ヘルスプロモーションの哲学的にまだ未開拓の部分、特に「フェミニズム、反権威主義、ポストモダニズム」などの部分はリゾーム型のヘルスプロモーションやPositive Devienceなどと、とより関連が深いと考えられます。ヘルスプロモーションの未開拓の部分、あなたも共に開拓を始めてみませんか。 まずはWifyでもどうでしょうか。 訂正: 動画の最後に言葉「Positive Deviance」が二度出て来ますが、最初の「Deviance」の発音が間違っています。二番目に出てくる発音で、ご理解ください。 発展: ヘルスプロモーションとは異質のルーツを持つ「健康教育」の本来の意味については、以下の動画をご覧ください。 → 健康教育とは何か? 資料:  ・Rhizomeとは(英語Wiki)  ・リゾーム型の健康教育ヘルスプロモーションのための発想と道具 (守山正樹)}, title = {ヘルスプロモーションとは何か : その意味/理論的背景/概念と変遷/日本での受容過程}, year = {2016}, yomi = {モリヤマ, マサキ} }