{"created":"2023-06-19T13:30:43.747464+00:00","id":668,"links":{},"metadata":{"_buckets":{"deposit":"0e686168-4214-4de7-a42a-1195a515df70"},"_deposit":{"created_by":14,"id":"668","owners":[14],"pid":{"revision_id":0,"type":"depid","value":"668"},"status":"published"},"_oai":{"id":"oai:jrckicn.repo.nii.ac.jp:00000668","sets":[]},"author_link":["1289"],"item_10010_alternative_title_1":{"attribute_name":"タイトルのヨミ","attribute_value_mlt":[{"subitem_alternative_title":"エンパワーメント トワ ナニカ : ソノ イミ ト ジッセン オ パウロ フレイレ ニ 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oppression」といっても、その対象は女性、先住民、被災者、障碍者など様々であり、エンパワーメントも多様な状況に関わる言葉です。このような中、健康教育やヘルスプロモーションの領域で、エンパワーメントを考えるときに忘れてはならないのは、ブラジル生まれの教育学者であり思想家であるパウロ・フレイレPaulo Freireです。\n\n1921年、ブラジルの中でも貧しい地域、北東部の出身であるフレイレは、公務員の家庭に生まれ、幼少期は比較的裕福に育ちました。しかし1930年の不況で東北部の砂糖キビ農業が壊滅的な打撃を受けた際、家庭が崩壊し、11歳のときには飢えと渇きを経験しました。一時的に学校にも行けなくなったフレイレは、飢餓との闘いに生涯を捧げる誓いをした、と言われています。\n\nその後、レシフェ大学法学部を終えたフレイレは、まず弁護士になりましたが直ぐに辞め、母国語(ポルトガル語)の教師として活動を開始しました。\n\n1946年から54年まで、ペルナンブコ州の教育文化局で、貧しい人々との対話と教育に従事する中で、フレイレが発見したのが「沈黙の文化:抑圧され搾取され、文字を奪われて、歴史の中で物言わぬ立場に置きされてて来た人々の文化」です。フレイレは同時にこの「沈黙の文化 Culture of silence」を克服する方法を探し始め、「Critical consciousness:conscientização:批判的意識化」の重要さに気づきました。\n\n「Critical consciousness:批判的意識化」とは、フレイレによれば「『沈黙の文化』に埋没させられている人々自身が、コーディネーターの助けを借りながら、対話と学習を媒介にして、抑圧されている状況を客観化し、自覚し、主体的に変革していく過程」「人間化Humanizationの過程」と定義されます。この考え方を突き詰めて生まれたのがフレイレの最もよく知られている著書『被抑圧者の教育学Pedagogy of the Oppressed』です。\n\n1960年代、フレイレは人々が「沈黙の文化」を意識し、学ぶ「民族文化運動:culture circle」を組織し、その中で独自の識字教育Literacy educationを理論化し実践していきました。当時のブラジル北東部においては2,500万人の住民のうち1,500万人が文字を読めない状態に置かれていた、との記録があります。\n\nこの識字教育でフレイレが最初に取り組んだのが、日々の過酷な労働と粗末な食事に加え、土地を追われるかもしれないストレスにさらされ、生き延びることに精一杯で、読み書きの重要さを理解するに至らなかった農民の現状を変える事でした。\n\n昼間の労働で疲れ果てている農民を、夜、文化サークルに集め、そこでフレイレが行ったのが10枚の絵から始まる識字教育です。そこでのフレイレの教育とはどのようなものだったのでしょうか。\n\nフレイレの用いた10枚の絵が分かりやすく示されている本として、こちら『Education for Critical Consciousness』があります。しかし著作権の関係で実物の絵を示すことはできません。そこで実物に代えて模写で代用します。\n\n<絵1> この絵には、真ん中の人を中心に自然と文化の双方が示されています。世界で生き、また生かされている人間の存在です。誰が井戸を掘ったのか、なぜそうしたのか等、絵の部分についての質問からいろいろなことを考えていきます。多分この人は水が欲しくて井戸を掘ったのでしょう。そのためには何らかの知識が必要でした。この人の右手には本があります。男性の後には家族らしい2人が描かれています。さらにその後には家があります。考えるなかで意識化が始まります。\n\n<絵2> 絵の中心は2人、男性と女性です。何かを話しているようです。女性の手には本があります。何が話されているのでしょうか。話すことで何が分かり何が変わるのでしょうか。対話から何が生まれるのでしょうか。\n\n<絵3> この絵で文化と言えるものは何でしょうか。この人が着ているインディアンの服装。それから弓と矢。空を飛んでいる鳥は自然のもの。しかし弓矢で射られて落ちた鳥は、もう自然の中のものとは言えません。食料でしょうか。絵を手がかりに、基本的な技術と自然と人間の関係を考えていきます。\n\n<絵4> 鉄砲を持った人が出てきます。先ほどの弓矢と鉄砲とは何が異なるのでしょうか。鉄砲を使いこなすためには何が必要なのでしょうか。犬もいます。犬と人間の関係はどうなっているのでしょうか。弓矢から鉄砲に変えることで、この人の立場や住んでいる世界はどのように変わるのでしょうか。弓矢の世界から鉄砲の世界に近づくためには、何が必要なのでしょうか。\n\n<絵5> 前の2枚の絵と同様に、この絵でも「狩り」が描かれています。しかしここでは狩人は猫、狩られているのはネズミ。人間と文化が背景にある「狩り」に比べ、このような自然の狩りは、何が異なるのでしょうか。人間である事は、何を意味するのでしょうか。\n\n<絵6> 二人の人は何をしているのでしょうか。自然界の物質を使って何かを作る、生み出すとは、どういうことでしょうか。このように作る事は、人間にとってどんな意味を持っているでしょうか。作っている人は何を感じているでしょうか。作り方を学ぶのにはどうしたらいいでしょうか。\n\n<絵7> 花々は野に咲いていれば「自然」です。しかしここでは壺の中にあります。バランスがとれた形をしています。人間が作り出す文化とはどういうことでしょうか。この花を見て私たちは何を感じるでしょうか。感じたことを人に伝えるとは、どういうことでしょうか。\n\n<絵8> 大きな1冊の本が出てきました。ここには一遍の詩が書いてあります。これは私たちと同じような1人の人が生み出した詩です。先ほどの花瓶と詩とはどう違うのでしょうか。ここには何が書いてあるのでしょうか。 (A terrivel bomba atomica: 恐ろしい原爆)\n\n<絵9> ここでは2種類の人がでてきます。よく見ると雰囲気や服装が違います。片方はブラジル南部で牛を飼うガウチョ、片方はブラジル北東部で牛を追うカーボーイ。2人が違う服装をしている背景には、何があるのでしょうか。気候の差、文化の差、それとも。共通点はあるのでしょうか。2人は何を話しているのでしょうか。話すことで何が生まれるのでしょうか。\n\n<絵10> 最後の絵。この絵から学び始めた人々が集う文化サークル、そのものの様子が描かれています。正面の壁にかけてあるのは先ほど見た大きな花瓶の絵。絵の前に立ち、絵を指しているヒトは、フレイレ自身です。このような場で、このように学ぶ事は、どういう意味があるのでしょうか。\n\n以上のような10枚の絵を通して、フレイレは、まず人々の文字を理解することへの関心を高め、そして具体的な文字の学習へと入ってきました。\n\nところで皆さんは、中学校や小学校での始めての英語の時間に、どのような教育を受けたでしょうか。1960年代中期に英語教育を受けた私の場合は「This is a pen」をクラス全員で唱え、覚えるような教育でした。フレイレが活躍し始める前、ブラジルで行われていた識字教育も同様、言葉を機械的に丸暗記するという方法でした。フレイレ自身はこのような詰め込み教育を「銀行型教育Banking model of education」として批判しています。\n\nフレイレの登場で、当時の識字教育は一変しました。フレイレは、まず絵と対話で人々の学習意欲を高めた後、識字教育の第一段階では「人々との何気ない会話のやりとりを通して、人々の間に広く用いられ、生活や仕事に密接に結びついている言葉や言い回しを選び出す作業」を行い、そこから第二段階以降の教育に入って行きました。\n\n例えば、スラムに住む人々に対して、スラムfavelaという言葉を識字教育の出発点として取り上げ、既存の識字教育では全く問題にされなかった「現実世界の意識化」と「文字の獲得」を同時に進めたのです。このようなフレイレの方法は画期的な成果を収め、最初に学んだ300人の労働者は45日間で文字を獲得できた、と言われています。\n\nさて以上フレイレの識字教育を通して、エンパワメントの1つの形を考えました。私たちが自分自身の現状を理解し意識し始めることから、エンパワメントが始まるわけです。出発点は「社会的抑圧 oppression」と「沈黙の文化 culture of silence」です。\n\n「沈黙の文化」が存在するのは、当時のブラジルだけではないでしょう。確かに今の日本では読み書きのできない人はいないかもしれません。しかし、私たちが生きている21世紀の日本でも一種の「沈黙の文化」「現実を率直に語らない/語れない状況」はそれなりに存在すると感じます。エンパワメントの可能性は常に私たちの毎日の中にあります。\n\n今日の考察では、Wikipediaに加えて、「被抑圧者の教育学」やこちらの3冊の英語の本を参考にしました。10枚の絵はこの本の中の絵を私が模写して用いました。\n\nフレイレの考え方は今でもいろいろな示唆を与えてくれます。私の友人である米国人のJeremiah Mock氏は以前 Visiting graduate student としてブラジルで活動したことがあり、ポルトガル語が得意です。Mock氏は「フレイレの本は最初に書かれたポルトガル語の表現が最も迫力がある。英語に直すだけで迫力が落ちる」と語っていました。皆さんも、日本語だけでなく、英語、いやできればポルトガル語でフレイレを読んでみませんか。\n\n・訂正: 映像中ではJeremiah Mock氏のブラジル滞在時の所属を[Peace Corps]としました。しかし私の記憶違いで、正確には上記テキスト中に修正表記したごとく[Visiting graduate student]です。ご訂正ください。\n\n(守山正樹)","subitem_description_type":"Other"}]},"item_10010_heading_23":{"attribute_name":"見出し","attribute_value_mlt":[{"subitem_heading_banner_headline":"対話を育てるアクションリサーチ ; WB15"},{"subitem_heading_banner_headline":"action research for narrative ; 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