@misc{oai:jrckicn.repo.nii.ac.jp:00000652, author = {MORIYAMA, Masaki and 守山, 正樹}, month = {Aug}, note = {video/mp4, application/pdf, 皆さんこんにちは。今回は「保健統計とは何か」をテーマに、「集団の健康の程度を知る考え方、保健統計」について、その意味・考え方・概要をお話しします。  診察室に来た患者さんの健康を診るとき、臨床医はどのような物差し・指標を使うでしょうか。まずは顔色、体温、脈拍などでしょうか。  一方、公衆衛生医の場合、対象は人々・集団です。集団の健康の程度を測る物差しを「健康指標」といいます。  「健康指標」は、健康に関連した「出来事・事件」の多少により、集団の健康水準を測定します。出来事とは「人生の重要な出来事・事件」。医師が立ち会う「出来事・事件」といえば疾病罹患・受療・死亡・出生など。  「健康指標」は「出来事・事件が起こる確率・比率」の計算で得られます。出来事・事件の「件数」を分子「人口」を分母とする割り算、が基本。じっさいの計算では「0.000??」とても小さな数値になることが多いため、千倍または10万倍し「人口千対、10万対」などと表します。 1.健康指標 以下、主な健康指標についてお話します。 ・病気の新発生を表すのが「罹患率」:分子は「ある期間(1年間)の新発生患者数」分母は人口。人口10万対で表します。 ・病気の存在量を表すのが「有病率」:分子は「ある時点の患者数(慢性疾患を持つ人の数)」分母は人口。人口千対で表わします。 ・受療の指標が「受療率」:分子は「ある時点の外来と入院の患者数」分母は人口。人口10万対で表します。3年に1度の厚生労働省・患者調査によります。 ・「粗死亡率」は死亡の指標: 分子は「ある集団の一年間の死亡数」、分母は人口、 人口千対で表します。 ・「年齢調整死亡率」も死亡の指標: 集団に高齢者が多いと粗死亡率は大、年少者が多いと粗死亡率は小。年齢構成の影響を受けないよう、補正したのが年齢調整死亡率。1985年の日本の年齢構成を「基準人口」として計算。 ・「乳児死亡率」は国際的な健康指標。乳児は抵抗力が弱く、乳児死亡は、集団の環境/社会/教育/医療を反映します。分子は「乳児死亡数:生後1年未満の死亡」分母は「出生数」。出生数1000対で表します。 ・「死因別死亡率」:代表的死因(がん等)について計算。分子は「ある死因で1年間に死亡した人数」分母は「人口」。人口10万対で表します。 次は出生の健康指標、3種類あります。 ・「粗出生率」:分子は「ある人口集団のその年の出生数」、分母は「人口」。人口千対で表します。 ・「合計特殊出生率」:15~49歳の女性につき年齢階級別出生率を合計。女性一人が一生の間に産む「子ども数」の予測値。値2.1~2.2だと将来人口一定。 ・「再生産率」:女性一人が一生の間に産む「女子数」の予測値。値が1.0だと将来人口は一定。多くの先進国は値が1未満、人口減少社会が予想されます。 分数以外の健康指標として、大切なのは平均余命です。 ・「平均余命」とは、現在X歳の生存者が、その後平均して何年生きられるか、その期待値です。また「平均寿命」とは「0歳の人の平均余命」です。平均余命は、年齢別死亡率に、生命表の考えを当てはめ、計算します。  生命表では、以下二つを仮定します:1)毎年10万人が出生、2)出生後は、観察対象の集団の年齢別死亡率に従って、生存者が死亡/減少を続ける。  社会が近代化すると乳児死亡率が低下、乳児期を生き延びる人々が増え、平均寿命は延長。中高年者の死亡率が改善すればさらに平均寿命が延長。大正から太平洋戦争敗戦まで平均寿命は50年以下でした。今80歳を越えつつあります。 2.人口統計 1)人口  人口とは、一定地域(ある地域、国、世界等)に居住する人数をいいます。  臨床医は目前の患者さんの顔色、健康状態などの様子を気にかけます。  一方、公衆衛生医は、目前の人口集団の様子を気にかけます。ある地域の人口集団は,出生,死亡,移動を通じて,その大きさや男女・年齢別構造が,また人口の経済的・社会的構造も、絶えず変化して行きます。 2)人口の既往歴、歴史  臨床医は診察室で、一人の患者さんに出会います。  一方、公衆衛生医が出会うのは人口集団。人々から構成され、人が死亡すると人口は減り、人が生まれると人口は増えます。  全員が死亡すると人口集団・社会は消滅するはずですが、日本も世界も全体としては消えることなく存在・繁栄しています。人口集団はいつから存在し、歴史の荒波をどう生き延びてきたのでしょうか。  大昔、現在のような都市は無く、人類は小集団として、小さな群れを作り、生き延びて来ました。人類史650万年の99%以上の期間、人口集団は狩猟採集漁労により、自然から食糧を得てきました。狩猟採集時代の末期、2万5千年前の世界人口は推定300万人。その後、農耕牧畜が始まり、新石器革命が起き、大集落を形成する中で人口が増え、西暦元年の世界人口は3億人(300万人の100倍)。2000年には61億人(2000倍)になりました。  人口は出生と死亡の差で増減します。出生と死亡が同数で、人口の増減が無い状態が続くと、人口は一定化。これが「静止人口」  出生と死亡のバランスには三状態(多産多死,多産少死,少産少死)があります。 「多産多死」:昔、農耕牧畜時代、多産(高出生率)で多死(高死亡率)が一般的でした。多産で(人口が)増えても、多死で減り、結果として人口は静止。 「多産少死」:その後、環境衛生改善や公衆衛生の進歩により、多産の一方で、少死の時代が到来しました。多産で人口が増加する一方、少死により、人口が減りにくくなり、結果として人口は急激に増加。 「少産小死」:社会が豊かになり、教育にお金かかるようになると、子ども数が減り、少産。一方、少死の状態は続きます。結果、人口増加はにぶり、人口は静止。多くの先進国人口はこの状態。 以上三状態の変化(多産多死→多産少死→少産少死)が「人口転換」です。グラフで可視化すると、こうなります。 3)人口統計の作られ方  臨床医は、目前の一人の患者さんの様子を知るために、診察や検査を行います。  では、公衆衛生医が人口集団の様子を知るためには、どうしたら良いでしょうか。人々・集団に対し、公衆衛生医が一人で調べられることは限界があります。そのようなときに役立つのが、国が行う「人口統計」です。 「人口静態統計」:国の人口を属性別に把握する統計が人口静態統計。属性とは、人々の年齢・性・世帯・住所・職業などのことです。全国民を対象に5年に一度国が行う人口静態調査「国勢調査」により、把握されます。 「人口動態統計」:国の人口の動き(増減)を把握する統計が人口動態統計。対象は1年間に発生した出生・死亡・婚姻・離婚などの件数。これらの出来事/事件は、起こると市区町村に届出が出されます。届出数から件数を把握します。  自治体によっては、市役所や役場が、住民サービスとして、元になる届出表の書き方の例を公開しています。皆さんはこうした届出表を目にしたことがあるでしょうか。  さて、こうして皆さんにお話している間にも、出生や死亡を始め様々な出来事・事件が起こっています。画面に示すのはEarth TodayというiPhone用のソフトです。人が一人生まれる度に緑の点が、一人亡くなる度に赤の点が、世界地図上にしばらく点灯し、消えていきます。 キーワード 保健統計、健康指標、出来事・事件、健康水準、確率・比率、人口千対、人口10万対 罹患率、新発生患者数、有病率、受療率、厚生労働省、患者調査、粗死亡率、年齢調整死亡率、年齢構成、基準人口、乳児死亡率、国際的健康指標、乳児死亡数、出生数、死因別死亡率、代表的死因、粗出生率、合計特殊出生率、将来人口、再生産率、人口減少社会、平均余命、期待値、平均寿命、生命表 人口統計、年齢別構造、社会的構造、人口集団、狩猟採集漁労、農耕牧畜、新石器革命、静止人口、多産多死、多産少死、少産少死、環境衛生改善、人口転換、人口静態統計、国勢調査、人口動態統計、住民サービス (守山正樹)}, title = {保健統計}, year = {2016}, yomi = {モリヤマ, マサキ} }