@misc{oai:jrckicn.repo.nii.ac.jp:00000630, author = {MORIYAMA, Masaki and 守山, 正樹}, month = {Nov}, note = {video/mp4, application/pdf, 皆さんこんにちは。 今回は疫学の観察研究の中でも、生態学的研究 (ecological study) についてお話しします。 1 生態学的研究の考え方  生態学的とは「集団自体と集団の置かれた状況への着目」を意味します。  生態学的研究は、人間集団を単位として「要因(原因)への暴露状況」と「疾病頻度」との関係を検討します。 1) 地図から考える 生態学的研究を行う出発点は、地図を用いて県や国などの人間集団と健康との関連を考えることです。  図は2009年の人口10万人あたりの結核感染者数の県別順位を日本地図上に示したものです。結核感染について、この図からどんな仮説が立てるでしょうか。  次の図は多発性硬化症のリスクを世界地図上に示したものです。この図からどんな仮説が立てられるでしょうか。 2) グラフから考える   生態学的研究では、地図に加えてグラフもよく用います  このグラフでは、横軸(x軸)は1日当たりの脂肪摂取量、縦軸(y軸)は乳癌の年齢調整死亡率です。個々の点は一人ひとりの人ではなく、各国を示します。横軸が要因暴露、縦軸が疾病罹患と考えると、地図の場合よりも、さらに因果関係の仮説が立てやすくなります。「脂肪の摂取量が増えると、乳癌の死亡が増える」という仮説はどうでしょうか。 以上のように、生態学的研究とは、地域や集団を単位として、異なる地域や国でのその要因と疾病との相関関係を調べていくため、相関研究(correlation study)とも呼ばれます。   2 生態学的錯誤 (ecological fallacy) 1) 生態学的錯誤とは 生態学的研究は、既存のデータを用いて行われることが多いので、資料収集がしやすく、まれな疾患やまれな要因でも調査は可能です。 しかし生態学的研究は集団レベルで要因暴露と疾病罹患の関連を検討する方法であるため、「集団レベルで関連が認められても、その関連が個人レベルでも当てはまるとは限らない」という欠点を持ちます。これを生態学的錯誤といいます。 2) 生態学的錯誤の例 たとえば、この図は大学生について、横軸が「勉強時間の中央値」、縦軸が「国家試験合格率」を示します。A大学はE大学に比較して、勉強時間が長く、合格率も高くなっています。しかしこの図から、「勉強時間に比例して、合格率も高くなる」「A大学の学生たちは、E大学に比較して、みんな勉強時間が長く、そのために合格率も高い」などと結論すると、誤る可能性があります。  次の図は、世界中の国について、横軸が「男性の平均余命」、縦軸が乳がんの罹患率を示します。この図から「長生きする男性は、乳がん罹患の危険性が増す」と一般的に推論すると、誤りであることもあります。長生きしなくても、乳がんに罹患する人もいます。図の関連は、必ずしも個人には当てはまりません。 3 皆さんも生態学的研究をしてみませんか 集団を単位とするデータの場合、国や自治体が国民や住民の健康状態を知るために、独自の調査を行い情報を公開する場合も増えています。ネット検索などで情報を得て、それをグラフ化することで、学生のみなさんも独自の仮説を立てるなど、生態学的研究を始めることができるでしょう。 (守山正樹)}, title = {生態学的研究}, year = {2016}, yomi = {モリヤマ, マサキ} }