@misc{oai:jrckicn.repo.nii.ac.jp:00000628, author = {MORIYAMA, Masaki and 守山, 正樹}, month = {Oct}, note = {video/mp4, application/pdf, 皆さんこんにちは。今日は因果関係の中でも、関係の意味や関係の形についてお話します。 1 相関関係と因果関係 最初は相関関係と因果関係の違いについてです。 相関関係とは、一方の値が変化すれば、他方の値も変化するという、2つの値の関連性を意味しています。 一方、因果関係は原因と結果の関係です。 この両者はしばしば混同されることがあるので、もう少し詳しく、似ている点、異なる点を見ていきます。  過去10年間のサンフランシスコのすべての火事のデータから、個々の火事(A)における消防車数(B)と損害額(C)の統計的関連性を調べた人がいます。この場合「消防車数(B)と損害額(C)の間」には顕著な統計的関連性が見られました。ではこの統計的関連性は、因果関係でしょうか。「消防車数が多いことが原因になって、結果として火事の損害額が増えた」と言えるでしょうか。よく考えるとこれは変な話です。「統計的な関連性」があったとしても、それがすぐに「因果関係」とは言えないことが分かります。  因果関係があるためには“一方が変化すれば” それに続く結果として、本当に “もう一方も変化する”が必要です。グラフ上で相関が認められても、「実際に消防車数を増やして、その結果、火事の損害額が増える」などということは、あり得ません。「一方が変化すると、結果として、もう一方も変化する」という定義に従うと、統計的に関連しているもののうち、ごく少数にしか因果関係は成立しません。この定義に合わない多数の統計的関連は、二次的関連と呼ばれます。  因果関係のない統計的関連は、通常、2つの事象の間の関連が、第3の事象に関連しているために生じます。例えば事象Aは、事象BおよびCの両方に因果関係があるとすると、BとCの間には統計的な関連が生まれます。しかしBを変えることによってC、Cを変えることによってBが変わるわけではなく、BとCとの関連は因果関係ではありません。 2 相関と交絡 因果関係、原因と結果の関係は、両者を矢印でむすび「A→B」のように、記号的に表現することが可能です。   「原因→結果」   「(危険因子への)暴露→疾病発生」   「独立変数→従属変数」   「調査対象とする曝露要因→調査対象とする疾病」 しかし、上記の矢印による表現は、実際の疫学調査においては、やや単純過ぎます。たとえば「喫煙→肺がん」「高塩分摂取→高血圧」など書いてしまうと、実際の複雑さが反映されません。現実には、原因と結果があるだけでなく、その双方に影響を与える別な因子・変数が存在する場合がほとんどです。 より現実に近い関連性は、たとえば以下のように表現されます。        年齢 年齢 ⇔    ⇒  ⇔     ⇒       喫煙 ⇒ 肺がん       高塩分摂取 ⇒ 高血圧 ここに示した年齢のように、原因(暴露要因)と結果(疾病発生)の両方に(肯定的または否定的に)相関する外部因子・変数を、交絡因子(または交絡変数)と呼びます。     交絡因子    ⇔ ⇒ 原因(暴露要因) ⇒ 結果(疾病発生)  暴露と疾病発生との関連において、ある要因が交絡因子として作用するためには、以下の三点が必要です。 ①疾病発生の危険因子である。 ②暴露要因と関係がある。 ③暴露と疾病発生の中間過程ではない。    喫煙    ⇔ ⇒ コーヒー  ⇒ 心筋梗塞          交絡因子が存在すると、真の因果関係が明らかでなくなるため、「交絡因子を調整する」すなわち「交絡因子の影響を可能な限り除去すること」が大切です。たとえば疫学調査でデータを集める際に、対象者を特定の性別や年齢幅の人々に限定したり、データを分析する際に、性と年齢の影響を統計計算の過程で調整(除去)することが、行われます。 3 多要因病因説 さて、病原体の発見、タバコの煙の中の発がん物資の発見などにより、因果関係は具体的になって来ました。その一方で、疾病は、特定の病原体や中毒物資だけで生じるのではなく、生活習慣や遺伝や環境など他のいくつもの要因も関わることが明らかになって来ました。こうした考え方を多要因原因説、多要因疾患モデルなどと言います。以下、主な多要因モデルを紹介します。 三角形モデル epidemiological triad/ triangle このモデルの構成要因は三つ、それらが相互に関連する様子が三角形で表わされます。このモデルがよく用いられる感染症の場合、3要因とは、感染症の原因である「微生物側(Agent)の要因」、感染を受ける「宿主側(Host)の要因」、そして「環境(Environment)要因」です。 感染症の場合、微生物だけでなく、微生物を媒介するVector(媒介動物)も大切であり、次のこの図では、三角形の真ん中に、四番目の因子としてVectorが示されています。 さて、この三角形モデルは感染症専用というわけではありません。同じ三角形モデルがこの図では肺がんの要因に適用され、Hostは「人間の要因」、Agentはタバコ、Vectorはタバコの業者・生産者と位置付けられています。 遺伝環境モデルGene-environment interaction model このモデルは疾病の要因を、遺伝と環境を両極として、両極の間のどこかに位置付けるものです。 車輪モデル Wheel of causation このモデルの特徴は、例えば三角形モデルでは重視されていた病因(Agent)の存在をそれほど特別なものとせず、病因も含めた全ての要因は、環境の中に位置付けられると捉えていることです。このモデルでは、遺伝的要因を中核とした、人間(宿主)の要因(Host)が中心に配置され、その周囲を環境要因(Environment)が取り囲んでいます。環境要因は、物理的環境・生物的環境・社会的環境の三つから成り立ち、相互に影響しあっています。 因果の綾/因果の織物モデル web of causation model 多要因が複雑に絡み合っている様子を英語では「Webウェッブ」、日本語では「綾」「織物」などと表現しています。私が学生のころ学んだMac Mahonによる疫学の教科書には、梅毒の治療と肝炎との関係を示す「因果の綾」が載っていました。次の図は、肥満と痩せに関する例です。 (守山正樹)}, title = {相関関係・因果関係・交絡, 多要因原因説, 多要因モデル}, year = {2016}, yomi = {モリヤマ, マサキ} }