@misc{oai:jrckicn.repo.nii.ac.jp:00000626, author = {MORIYAMA, Masaki and 守山, 正樹}, month = {Mar}, note = {video/mp4, application/pdf, さて今日の課題は、疾病の量をどのように数字で表すかについてです。 病気の量を数字で表すそうとするとき、大きく分けると2つの表し方があります。 一つが疾病の現状を把握する「有病Prevalence 」、もう一つが疾病の発生を把握する「罹患Incidence」です。 1 現状を把握する有病Prevalence 、有病率Prevalence rate 有病Prevalenceとは、ある一時点において、疾病を有している人が何人いるか、有病率Prevalence rateとは、その割合です。疾病を要する人の数を分子、対象者数を分母として、割合を計算します。そのときの様子を現状把握する考え方です。 ではこの講義室で皆さんの健康状態の現場把握をするには、どうしたらよいでしょうか。ここで皆さんのスナップ写真を撮り、写真から一人ひとりの顔が元気かどうかを確認し「落ち込んでいる人数」が分かれば、それも有病Prevalenceといえます。有病Prevalenceを分子に「出席者数」を分母にとって割り算すれば、落ち込みの有病率Prevalence rateが計算できます。 写真から外見を見るだけでなく、全員に疾病の有無を質問すると、様々な有病Prevalence が分かります。 有病Prevalence を知るための質問(例) 「皆さんの中で、現在(花粉症)の人は手を挙げて下さい。」 (カッコ)内を他の病名に変えていくと、様々な疾患・健康状態について、有病Prevalence がわかります。 花粉症、便秘、貧血、アトピー性皮膚炎、肥満・・・ こうして得た有病Prevalenceの値から、有病率Prevalence rateが計算されます。 計算式を確認します。 有病率Prevalence rate= (ある1時点において疾病を有する人の数)/ (対象者数)です。 有病率は、ある一時点における地域の人々の健康状態を把握し、疾病の存在量を知るのに適した指標です。 2 疾病の発生を把握するIncidence罹患 1) 罹患の考え方 では次に疾病の発生を把握する罹患Incidence、罹患率Incidence rateについてお話しします。 罹患Incidenceとは、ある集団において、一定の期間における疾病の新たな発生、罹患率Incidence rateとは発生の率のことです。 罹患Incidenceを考えるときのポイントは、疾病の新たな発生をどうやって把握するかです。 先ほど出てきた有病Prevalenceによる現場把握では、その時点のスナップ写真を撮ったり、質問したりすることが有効でした。しかし新たな発生、罹患Incidenceを把握する場合には、これではだめです。一時点のスナップ写真ではなく、一定期間の変化を観察できる動画を撮ることで初めて、新たに何人が笑顔になった、などの動きを把握できます。新たな発生を把握するには、追跡し、時間経過を観察することが必要です。 罹患Incidenceとは、調査開始の時点ではまだ生じていない新たな罹患の確率(または危険度、リスク)を調べる考え方です。 2) 累積罹患率の計算 さて、こうして罹患率の一種である累積罹患率を求める準備ができました。 ある観察集団での、ある疾病の:累積罹患率Cumulative incidence rate = (ある一定の観察期間内に新発生した患者数)/(観察開始時点の人数) 上記の累積罹患率の計算で「ある一定の観察期間」という言葉が出てきました。罹患を数えるには観察が必要です。累積罹患率の場合は「かなり長い一定期間」たとえば2年、5年、10年などの間に発生した患者数を累積し割合を求めます。よって累積罹患率は「一定期間内の患者発生割合」ともいわれます。 3) 観察人年の考え方 さて、対象とする人々全員を「かなり長い一定期間」追跡し観察することは、それほど簡単ではありません。対象者が高齢であれば死亡することもあり得ます。「一律に◯年は観察する」などと計画しても、実際は来年何が起きるかさえ不確定です。そこで「一人を0.1年でも観察できたら、その事実から罹患を計算できるよう工夫する」として「観察人年 person-year」という考え方が生まれました。 5人の人を追跡し観察する例を考えます。たった5人であっても、このグラフのように全員を完璧に5年観察するのは、実際は難しいことです。 次の図は現実にどこまで観察できたかを示します。 2番の人と5番の人は最後まで観察できていますが、1番の人は4年目に発症、3番と4番の人はそれぞれ2年目、1年目に発症し、ここで観察が終わっています。 このように対象者一人ひとりの観察期間が多様な場合の罹患の率を計算するにあたり、疫学者は分母に「観察開始時点の人数」ではなく、「一人の人について実際に観察できた期間(年)を集団として総計した値」すなわち「観察人年person-year」を用いる、という工夫をしました。100人を1年間観察すれば100人年となります。観察期間中に死亡、転出などが発生すれば、その人はその時点までが観察期間となります。 4) 罹患率の計算 観察人年を分母として求める罹患incidenceの値が、罹患率incidence rateです。 ある観察集団での、ある疾病の: 罹患率Incidence rate = (観察期間内に新発生した患者数) / (観察人年) さて以上、疫学で最もよく用いる2種類の値、有病と罹患について説明しました。このほかにもいくつか指標があります。 3 比ratio、割合proportion、率rateの違い 比ratioとは1つの量を他の量で割って得られる値のことで、片方がもう片方に含まれていなくても良いものです。割合は、分子が分母の1部であるもので広い意味では比の1つです。 率rateは、ある現象の発生頻度に関する指標で死亡率などがあります。 率rate= (特定期間に発生した事柄の数)/(その期間の対象者数) 4 有病率の仲間、割合をもとにした値 すでに述べたように、有病率Prevalence rateは、疾病を要する人の数を分子、対象者数を分母として、割合を計算しました。有病率以外に、割合の考え方で計算できる値としては、以下のようなものがあります。 受療率=(医療機関を受診した患者数)/人口 致命率= (ある疾病による死亡数) / (ある疾病の罹患数) 発症率= (発症者数)/ (対象集団で疾病発生のリスクのあった人数) 死因別死亡割合= (ある死因による死亡数) /(全死亡数) PMI = (50以上の死亡数)/ (全死亡数) 死亡率= (ある期間の死亡数) / 人口 5 それぞれの指標の関係 有病率は、有病期間が一定であれば、罹患率が高くなるほど高くなる。罹患率が一定でも、治療法の改善により死亡率が減少し有病期間が長くなれば、有病率は高くなる。さらなる治療法の発展で治癒するようになれば、有病率は減少する。 質問。あなたは保健師です。ある町の成人ほぼ全員(1,000人)に役場の体育館に集まってもらい、健康について話をする機会を得ました。そこで、物忘れの有病率を調べ、認知症について町民と共に考えることにしました。この時、あなたはどんな質問をしますか。 質問をした結果1,000人中、125人の人が、最近よく物忘れをすると回答しました。物忘れの有病率を求めなさい。 (守山正樹)}, title = {疾病の量的把握 ; 有病率, 罹患率, 人年法}, year = {2018}, yomi = {モリヤマ, マサキ} }